ぎふの木の住まい協議会 事務局

close close

2024.12.31地元の工務店が建てる木造建築物

株式会社弘栄工務店

昨今、岐阜県においても公共施設や園舎、福祉施設といった住宅以外の低層建物を木造で建築するケースが見られるようになった。県産材を使い、地域で働く大工の手で、地域の人たちに必要とされる建物がつくられる。その結果、人が多く集まる場所に木のあたたかみを体感できる心地良い空間が生まれる。そんな木造低層非住宅を増やすべく、地域に根付いてきた工務店が動き始めている。

地元の工務店が地域の木造建築物を建てる意味

戦後の植林による人工林が本格的な収穫期を迎えるなか、木材利用の減少が大きな問題になっている。危機感を抱いた国の林野庁により、低層公共建築物の木造・木質化を促進する法律が制定され、県土の81%を森林が占める岐阜県においても、住宅以外の建物を木造で建てようという動きが見え始めてきた。多くの建築物に県産材を使うと定期的な伐採が行われ、岐阜の森が循環し環境保全につながる。そして地域のことをよく知る地元工務店が、住宅で培ったノウハウを生かしながら、大工と共に中規模の建物を建築する。それは森林環境を守ること、大工の技術が継承されること、工務店に実力がつくことにつながる。そして地域の業者が関わることでメンテナンスも容易になり、地域の人たちに愛され受け継がれる建物になる。地域活性を促すきっかけにもなるのだ。

木造の大空間を実現するのは柱やサッシといった住宅用建材

岐阜県可児市に、岐阜県産の木材を90%以上使い、木組みによる木造構造美を大空間で表したカフェ「v o l p e c a f e」がある。何本もの木材がアーチを描きながら建物全体を支え、木組み(構造)の美しさそのものを堪能できる空間だ。このカフェを設計・施工したのが、主に可児市で事業を展開する弘栄工務店。「きっかけは、地域の方々にこういう木組みができる工務店が身近にあり、天井が高い大空間を木造でもできることを知ってほしかったから。カフェなら地域の人たちが気軽に立ち寄れますから」と話すのは同社の今井幸蔵社長。圧巻ともいえる木造構造美を実現したのが、「南京玉すだれ工法」だ。9メートルある間口を、8メートルの無垢材の梁を等間隔に架けて、柱を立てずに大空間へと仕立てあげていく。窓の木組みもデザイン美を引き上げる要素だ。「使う材料は、住宅で利用するものばかりです。例えば窓の木組みは、桧の柱と既存のサッシを使い、パズルのように組み合わせました。天井も岐阜県で生産された桧の合板。いつも住宅建築で使っている建材に、少し変化をつけて造りあげました」。木造建築の技術と経験を積み上げてきた同社ならではの仕事ぶりだが、デザインの着想はどこからくるのか。「普段から得てきた知識や見てきたものを、引っ張り出したり、組み合わせたりして、こうしたらおもしろいかなと。例えば地層のズレ感や、植物の茎の断面といった自然界からヒントを得ることが多いですね。自然のモチーフから出てきたデザインは、疲れないし癒やされると思いますよ」。実際に、窓の木組みや屋根の連なり、外構の石積みなどを、その自然界が織りなすデザインを基に表現した。

地域活性を促す循環の構図 木の波動も感じる心地良い空間

株式会社弘栄工務店 代表取締役社長/一級建築士 今井幸蔵さん

こうした着想を形にするのが大工の力量だ。まず模型を造り、どう組み立てていくかを大工と一緒に相談することに、長く時間を費やしたという。「今回中心になってくれた棟梁は30代。新しい試みに対して、若い感性で意欲的に取り組んでくれました。価値観を共有できたことも良かったですね」と今井社長。技術を継承している若い大工が、住宅以外の木造建築を手掛けることでさらに実力を上げているという。「木造の良さは、専門家がよく”木の波動“ ”建物の波動“と表しますが、体感による心地良さでしょう。子どもが無意識に、無垢の床でごろごろしたり、裸足になったりするような」。公民館など住宅以外の木造建築物が増えることは、環境・地域活性などさまざまな方面に良い影響を与えていく。地域の工務店が担う役割は大きい。

店舗DATA

Life design space CO-A village

岐阜県可児市下恵土6013-1

volpe cafe(CO-A village内)

営業時間/11:00~22:00 定休日/水曜

TEL.0574-66-1770

施工:株式会社弘栄工務店

トップへ