ぎふの木の住まい協議会 事務局

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2025.02.07地域の工務店が建てる木造建築物 CO-A DIY FACTORY

株式会社弘栄工務店

昨今、岐阜県においても公共施設や医療施設など住宅以外の低層建物を木造で建築するケースが見られるようになった。県産材を活用してさまざまな工法を用い、地域で働く大工の手で建てる非住宅。設計力と技術力によって、木造建築の可能性は広がっている。

地域の工務店が地域の非住宅を建てる意味

木材利用の減少が日本の森林保全に大きな問題を投げかけるなか、国の政策により低層公共建築物の木造・木質化を促進する法律が制定され、県土の81%を森林が占める岐阜県においても、住宅以外の建物を木造で建てようという動きが出てきている。

小径木(間伐材)を組み合わせたトラス組み工法と大工の技術力

岐阜県可児市に、飛騨の匠の技を生かした“見せる木材加工場”がコンセプトの「CO -A DIY FACTORY」がある。大通りから1本離れた場所にありながら、全面ガラス張りの向こうに見える木組みの様子が印象的な建物。中に入ると、木の格子が天井全体を覆い、そのデザインの美しさに圧倒される。

ここを企画・設計・施工したのが、下呂市に本社を置き、大工からはじまった企業として可児市を中心に事業を展開する弘栄工務店だ。「この天井の木組みの材料は間伐材です。太陽の光が差し込む健全な森林を育てるために間引かれた、つまり不要となった小径木(間伐材)を構造材として使っています。この建物の幅は11メートルあるので、一般的には鉄骨や強度のある集成材が使われますが、ここでは無垢の間伐材を構造材として使いたいという思いがありました」と話すのは同社の今井社長。

この新しい取り組みのため大工と一緒に試行錯誤を重ねながら、間伐材同士を三角形につなぎ合わせるトラス組みを採用することに。このトラス組みを規則的に複数組み合わせることで強度が増し、屋根全体を支える構造材となっている。「工法の研究ももちろんですが、欠かせないのが大工の技術力です。ここの建築には7年目の若い棟梁が携わっています。新しい試みに対して若い感性で意欲的に取り組んでくれました」と今井社長。技術を継承している若い大工が、住宅以外の木造建築を手掛けることでさらに実力を上げているという。

DIYスペースは地域の人々と大工をつなぐ場

「CO -A DIY FACTORY」のスペースの半分は、大工が使う建材の加工場。あとの半分がDIYスペースだ。「以前から、大工と地域の方をつなぐ場があればおもしろそうだと思っていました。DIYスペースは自由にDIYを楽しんでもらう場で、建築士が作りたいものの設計や機材の使い方をサポートします」。子ども向けのワークショップも開き、木育の場にもなっている。

地域の工務店が、福祉施設や園舎、カフェなど住宅以外の木造建築に取り組み、多くの建築物に県産材が使われると、定期的な伐採が行われ、岐阜の森が循環し環境保全につながる。そして地域のことをよく知る工務店が、住宅で培ったノウハウを生かしながら、大工と共に中規模の建物を建築する。それは森林環境を守ることだけでなく、大工の技術が継承されること、工務店に実力がつくことにつながる。そして地域の人たちの手で造られた建物はメンテナンスも容易になり、地元の人たちに愛され、受け継がれる建物になる。地域の活性化を促すきっかけにもなるのだ。

CO-A DIY F ACTORY 

DATA

〒 509-0203岐阜県可児市下恵土6014-1

TEL 0574-60-3911

取材協力:株式会社弘栄工務店

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